1.活動報告

長野県主催世代間研修会に出席、講演しました 令和5年(2023)11月15日 長野市

近年、国、自治体、民間企業を問わず多くの事業所において50代以上の定年を迎えるいわゆるベテラン世代と若年層世代における様々な経験、技術、ノウハウの継承が問題になっています。水稲直播栽培の技術開発と普及において先進的実績がある長野県でも、農業技術普及推進において同様な問題意識を抱えておられ、この度、同県農業農村支援センターの若手普及職員を対象に「令和5年度世代間研修(作物)」が開催されました。当会にも水稲直播栽培技術開発の歴史等について話題提供をとの要請があり、松村会長、森田委員、椛木委員が出席しました。椛木委員は「水稲直播栽培技術開発の推移」の講演を行いました。抜粋を末尾に付けましたのでご覧ください。

講演では、①戦後稲作の推移と機械移植技術の普及、②直播栽培技術の開発経過と現状、③直播栽培発展のための方策、の3つの視点が提示されました。①では、戦後稲作の全般的推移の中で単収が伸びるとともに機械移植が開発・普及したこと、②では、その推移の中でコスト低減や担い手減少が問題となりより省力的な直播栽培の技術開発が進んだこと、③では今後の技術開発の方向性や展望について豊富なわかりやすいスライドを示して説明しました。補足として、松村会長が「直播技術はそれ単独ではなく稲作における直播・移植の両技術の発達との視点で捉えていただきたい、稲作での直播の位置づけ単純な低コスト性からその導入による省力性や作期分散効果等による幅広い経営改善が利活用ポイントになって来ているので、地域農業にいかなる特徴を活かすのかをお考えいただきたい。」とコメントしました。次に森田委員から、「直播栽培に不可欠の農薬登録された除草剤は以前は非常に少なかったが、今年初め時点では登録剤は555剤あり「直播で使える剤が少ない」状況は無くなっている、適正使用には技術が必要なので普及現場で各材の登録内容に留意し活用していただきたい。」とコメントしました。現在の登録剤数を語った際には室内に静かな驚きの声が上がりました。

続いて具体的なテーマとして、県職員OBや現役ベテラン普及担当者、農業試験場研究職員、全農長野の講演者から、長野県での直播栽培の技術開発と現場普及取り組みに関するお話、直近のリゾケア剤の話題、また今年とくにクローズアップされている鳥獣害被害対策などの講演がありました。県内各所から参集された若手普及職員からの質問や意見・感想も活発で、大変に有意義な研修会でした。今後も引き続き水稲直播研究会にお声がけいただけることを期待します。


「世代間研修(作物)」の会場で講演する椛木委員

水稲直播栽培技術開発の推移(抜粋)
水稲直播研究会中央委員 椛木信幸

この表は戦後から現在に到るコメの生産状況を示したものです。1945年の終戦とともに農地改革等の民主化と食糧増産のための米作日本一奨励事業等の食糧不足解消のための活動が精力的に進められました。一方で食管制度の下における米価支持や灌漑施設整備等の生産振興策が実施されました。その結果高度経済成長が進展した1960年代後半からコメ余り現象が起こり、1971年にはコメの生産調整のための減反政策が実施されました。さらに1960年代の後半から機械移植技術が普及して単収増加と生産の安定化により生産過剰と転作促進が加速されました。このような状況の中でGATT、WTO等による貿易自由化の圧力による国際化へ対応した生産費の削減が要請されるとともに、農村の過疎化と担い手の高齢化により中核農家への土地集中が進行して大規模化の必要性が高まってきている状況にあります。

我が国では昭和30年代(1960年前後)から経済の高度生長時代に入り農村から都市へ人口が移動したため手植えのための労力が不足してきました。ちょうどそのころプロパニルのような乾田直播で入水前に用いることができる除草剤が開発されたこともあり乾田直播を中心に普及が拡大し、1974年時点で55,000haにまで拡大しました。

しかし同時期に普及が始まった機械移植栽培の影響を受けて急激に縮小し、1991年には7,200haにまで落ち込みました。また、この時期には湛水直播栽培における重要な技術である過酸化石灰種子粉衣技術、安全性が高いピラゾレートのような除草剤が開発され、湛水土壌中直播の普及が始まっています。直播栽培技術の開発が加速されたのは1994年から実施された日本型直播実証事業からであり、官民一体となった活動の中で各種直播方式、適性品種、直播用除草剤、高精度播種機、種子コーティング技術等の開発が行われました。現段階における直播方式の定義、地域別の栽培面積、各種栽培法とその特徴等について紹介いたします。

直播栽培が今後とも発展していくための2本の柱として1.構成要素技術の開発と2.現場における持続的システムの確立が挙げられます。

1.構成要素技術の開発では①高度倒伏抵抗性・低高温耐性・病虫害抵抗性等の品種開発、②水田造成・潅排水、畦畔管理等に関わる基盤整備技術、③高精度播種機・圃場管理機・空中防除機等の機械作業技術、④施肥・水管理・栽培指針等に関わる栽培管理技術、⑤除草剤・殺虫殺菌剤・鳥貝害防止等の防除技術の開発が重要です。

2.現場における持続的システムの確立では、①地域の条件に即した直播栽培法の確立、②直播のメリットを生かした活用、および③生産と販売戦略の確立が重要となります。本日はこれらについて現在までに達成された事例について紹介いたします。

岩手県(滝沢市・八幡平市)で現地研究会を開催しました 令和5年(2023)8月21日

当研究会では会員ほか関係者向けに毎年、現地研究会や検討会を実施しています。本年度は岩手大学が開発に取り組んでいる「初冬播き水稲直播技術」をテーマとして取り上げ、8月21日の午後半日、同大学農学部付属農場(寒冷フィールドサイエンス教育研究センター滝沢農場、岩手県・滝沢市)、(株)かきのうえ初冬直播き栽培実証ほ場(同・八幡平市)にて開催しました。

「初冬播き水稲直播技術」は岩手大学農学部作物学研究室の下野裕之教授らが開発と普及を進めている技術です。農閑期の初冬に種籾を土中に播種し雪の下で越冬させ、雪解けとともに出芽した稲を育て秋収穫する作型の水稲直播です。水稲作の作型を、第1の作型「春の移植」、第2の作型「春の直播」とした場合、この栽培方式は第3の作型「初冬の直播」であり新たな水稲作の選択肢になるとしています。技術のメリットは、何といっても準備作業を含む播種作業を農閑期に行うことによる作業分散効果です。農業担い手層の減少にともない、全国で、大規模農業者への離農農家の農地集中あるいは耕作依頼や作業委託が増加しています。しかし、これまでの第1、第2の作型(春の移植、直播)だけでは受け手の大規模農業者が対応できない局面も生じています。この状況に応え、春作業が大きく緩和できる技術として「初冬播き水稲直播」が提唱されています。播種自体は従来の乾田直播や湛水直播の手法で行うため、新規の機械投資が要らないこと等も利点として挙げられます。

当日は13時半から滝沢農場で室内検討と場内試験ほ場の見学を行い、その後、借り上げバスで八幡平市の実証ほ場を訪問しました。

室内検討では、下野教授から本技術の基本と開発・普及状況についてご説明いただきました。すでにご紹介した技術のコンセプトやメリットのほか、これまで全国の9道県、10品種、5種類の播種機で実証を行い有効な技術と認識していること、栽培のポイントとして初冬の播種適期、種子コーティング剤、播種時の留意点、施肥法、雑草防除法などを紹介いただきました。これらの情報はイネ初冬直播きの発展と普及を進める会のWeb サイトに公開されていますので是非ご覧ください。
→ Home | イネ初冬直播き (fuyugoshi.wixsite.com)

下野教授によるご説明

ともに開発に取り組まれている由比 進教授(農場長)からは滝沢農場の概要を紹介いただきました。農場での教育面は無論のこと、研究開発においては世界初のモチ性ヒエの育成、ブルーベリーの国内最大規模雑種実生集団の育成、蜜入り・高糖度リンゴ「はるか」の育成、晩抽性ハクサイ新品種「いとさい1号」、 ミニトマトによる「メンデルの法則体験」、クッキングトマト品種「すずこま」の育成などを説明いただきました。由比教授ご自身は野菜がご専門で、初冬直播き水稲直播は野菜の周年生産で見られる「作型」の考え方を稲栽培で実現した画期的技術と考えているなど興味深いお話をいただきました。

由比教授によるご説明

試験ほ場見学では西 政佳技術専門員のご説明で「あきたこまち」10a 区画2筆の栽培ほ場を見学しました。令和4年11月 9日に前年産種子をキヒゲンフロアブル粉衣しグレンドリル播種、条間 24cm と 12cmでの生育・収量を検討しているとのことでした。積雪期間は 88 日で消雪後に鎮圧 を行い出芽は 4 月 25 日で、出芽率は約35%で苗立ち数は100~200 本/㎡と予定通りとなったそうです。 除草体系は出芽前に非選択性除草剤を施用したが今年は稲の出芽が早く(例年は 5 月 10 日頃)雑草があまり出芽していなかったのでその効果は疑問があるとのこと。出芽後にクリンチャーバスを処理したが残草が認められたのでさらにノミニーを処理し、入水後に一発剤を施用。そのほか施肥は緩効性肥料を施用している、立地的に漏水の多い圃場なので雑草防除、肥効維持に苦労しているなど説明いただきました。見たところ、2筆とも出穂 10 日前後のステージにあり、稲の生育揃いは良くまずまずの生育との印象でした。稈長は 80cm 前後で倒伏の恐れは少ないようでしたが、肥効が少なかったせいか穂数および1穂籾数がやや少なく達観で500kg 前後の収量かなと思われました。

初冬播き直播試験ほ場の状況

滝沢農場で室内検討と圃場見学を終えたのち、バスで30分離れた八幡平市の(株)かきのうえ初冬直播き栽培実証ほ場に向かいました。圃場は西に八幡平の山々と安比高原スキー場、南に岩手山を臨む北側、東側が開けた見通しの良い小盆地にあり、標高は滝沢農場が208mでしたがここは266mとさらに高くなっています。(株)かきのうえは八幡平市で8代続く稲作農家で、3年前に法人化し、水稲(飼料イネを含む)・大豆・小麦の作目で40ha以上の面積(借地を含む)を耕作されています。他に乾燥調製や薬剤散布等の作業受託、Web での農産物販売、マルシェ、ふるさと納税、など手広い経営をされています。水稲直播は平成27年度から鉄コーティングなどを行ってきた実績があるそうです。今後、間違いなく増える離農者の耕作地を受け止めるには従来の移植栽培では労力・機材や資材・作付け期間の点で限界があると考え、初冬直播を導入することで面積拡大に備えたいとされています。圃場の前で代表の立柳慎光代表から技術導入の動機、初冬播き直播の実施状況と手ごたえ、今後の計画などをお話しいただきました。

以下、実施状況ですが、初冬播き直播の実証は3年目になるが、「あきたこまち」での収量は 2020/21(播種年/収穫年) 、2021/22ともそれぞれの春移植と同程度の好成績を得ている。本年は「あきたこまち」の他に「つきあかり」を導入し 出芽・生育ともに良好な経過を辿っている。播種は令和4年 11 月 12~13 日にキヒゲン R-2 フロアブルなど処理籾を播種量18~20kg/10a、ニプロ製スリップローラーで播種。出芽は 5 月 5 日で6 月 15 日の苗立ち調査では苗立ち数はかなり多くなった。施肥は乾田直播 211 号(N12kg/10a)、雑草防 除は初中期一発体系と雑草が多い時はクリンチャーバスを施用しているが本年は初中期一発剤のみの施用(アシュラフロアブルのドローン滴下)。

見たところの稲の生育状況は、苗立ち数が多かったためか非常に穂数が多い密な生育状況で、稈長も85~90cm 程度あって倒伏の恐れが心配されました。雑草防除ですが、イネ出芽前の非選択性除草剤処理については、周辺の水田での移植時期と重なるためできていないとののことでした。しかし、雑草の発生の少ないほ場とのことで、アメリカセンダングサなど入水前の雑草がわずかに残り、アメ リカアゼナのあと発生が見られるものの、雑草管理は良好でした。これまでのところ実施して「失敗していない」ことが逆に不安であると言われたこと、来年から圃場整備が行われるのでそれ以降に初冬播き直播を本格的に取り入れた経営を進めたい、食用米・飼料イネ等の用途の違いや品種早晩性の違いなどを考慮し、どの品種を移植で、春まき直播で、初冬播き直播で栽培するのかを考えて作付け計画を立てたい、など元気のでる積極的なご発言が印象的でした。

当日は当会会員のほか、農林水産省や農研機構の関係者も多数参加され、北東北にしては大変暑い日(盛岡市最高気温34.9℃)でしたが検討会を終えた夕刻には暑さもおさまり、高原からの風が涼しく吹いていました。

最後に、岩手大学農学部に関しては、その研究と技術開発を広く農業者等とともに進めてきた何か伝統のようなものを感じていましたが、今回の「初冬播き水稲直播技術」の検討会においても、その伝統は引き続き強く引き継がれているなあと感じ盛岡を後にしました。今までのところ、東北地域など北日本向けの技術として開発・普及が進められていますが、東北以南の東日本あるいは西日本でも適用できる条件等を探ってきたいとのことでした。

直播水稲の収穫前年の秋以降に行う取り組みは、かつて姫田正美氏などにより検討されことがあります。また、太平洋戦争中の労働力不足の時期には冬から春の初めに麦の畝間に播種する麦間直播が関東などで普及し、現在も一部で続いており、最近は新たな開発の取り組みも行われています。なので、作型移動の取り組みは「冬播き直播」が初めてとは言えないと考えます。しかし、大規模層への農地集中に対応する作業分散技術として正面からメリットを掲げ、播種時期を大胆に変えるものとして注目すべきものと思います。加えて、本技術においては、その年の天候やほ場土壌条件が成否を大きく左右すると考えられるので、基本技術を骨子として、いかに農業者が自己の技術力を駆使し状況を判断して作付け設計や栽培管理を行って行くかが重要と言えるでしょう。その意味でも研究・普及と農業者の協力は欠かせないものと思いました。

宮城県 JA加美よつば直播栽培研究会の登熟後期の湛水直播水稲を観察しました

令和5(2023)年9月1日

稲作を中心に長年にわたる「水」の管理と調整システムを評価された世界農業遺産「大崎耕土」の水源地の位置を占める宮城県北西部のJA加美よつば農業協同組合管内では、「直播栽培研究会」が組織され、水稲直播研究会との連携の下で年に数回の現地研究会を開いて湛水直播栽培技術の向上に努めてきました。全国的に異常な暑さが続いた令和5(2023)年、この日も残暑が猛暑となった9月1日の午後に本年2回目の現地検討会が開催されました。本研究会から2名の委員が出席し、約10名の参加者と登熟後期に達した3筆の直播栽培ほ場を観察してイネの生育状況と雑草制御の状況に助言し、その後室内の学習会で話題提供を行いました。以下にその概要を紹介します。 
 なお、JA加美よつば直播栽培研究会の現地研究会については、本研究会HPの「2023年6月27日」、「2022年9月29日」、「令和4(2022)年6月」の記事および会誌42号の記事(p.46-51、2019)も併せてご覧ください。

Ⅰ.ほ場巡回

1. A氏圃場
(稲の生育状況)

稲作を中心に長年にわたる「水」の管理と調整システムを評価された世界農業遺産「大崎耕土」の水源地の位置を占める宮城県北西部のJA加美よつば農業協同組合管内では、「直播栽培研究会」が組織され、水稲直播研究会との連携の下で年に数回の現地研究会を開いて湛水直播栽培技術の向上に努めてきました。全国的に異常な暑さが続いた令和5(2023)年、この日も残暑が猛暑となった9月1日の午後に本年2回目の現地検討会が開催されました。本研究会から2名の委員が出席し、約10名の参加者と登熟後期に達した3筆の直播栽培ほ場を観察してイネの生育状況と雑草制御の状況に助言し、その後室内の学習会で話題提供を行いました。以下にその概要を紹介します。
なお、JA加美よつば直播栽培研究会の現地研究会については、本研究会HPの「2023年6月27日」、「2022年9月29日」、「令和4(2022)年6月」の記事および会誌42号の記事(p.46-51、2019)も併せてご覧ください。

6月27日の調査では苗立ちは疎(1株個体数1~3本)であったが、圃場内で大きく抜けた部所は認められませんでした(写真1)。分げつの発生はハイブリッドライス特有で多かったので(茎数6~8本/個体)、穂数の確保については問題なしと判断されました。その後8月6日にタキコート流し込み肥料10kg/10aを施用し、出穂期は8月16日でした。今回の観察では稲は圃場全体で旺盛な生育を示しており、病虫害の問題点はとくに認められませんでした(写真2)。生育調査では、稈長95cm、1株穂数16本/株、1穂粒数150粒でした。㎡当株数を18(坪60株仕様)、登熟歩合を60%、千粒重21gと仮定した収量は約9俵(18x16x150x0.6×21/1000=544kg)と推定されました。

6月の観察ではイネのすき間にアゼナ類が僅かにみられる程度で雑草制御は良好と思われましたが、雑草があと発生したようで7月15日にワイドアタックSCで3回目の剤を処理したとのことです。アメリカアゼナがほぼ全体に、イネ草冠の上に出穂したタイヌビエとイヌビエが2辺の畦沿いにやや多く、チョウジタデ、オモダカ、イボクサが少し残り、部分的にイネ科多年生雑草のアシカキとチゴザサが畦から侵入しています(写真-雑-1)。3回目の除草剤の効果が不十分な要因や、アメリカアゼナがスルホニルウレア抵抗性か、遅発生かの要因などを検討する必要があります。

2.B氏圃場

(稲の生育状況)

6月27日の調査では、使用品種「つきあかり」が穂重型で千粒重が大きいことから松村会長からの播種量増の提言を受けて4kg/10aで播種を行ったため苗立ちはやや多(1株個体数4~6本)であり、全体としてやや密な生育でした(写真3)。その後7月25日にタキコート流し込み肥料3kg/10aを施用し、出穂期は8月1日でした。今回の観察でも稲の繁茂量が大きく多収型の生育と認められました(写真4)。生育調査では、稈長85cm、1株穂数は穂重型なので苗立ちの割には多くなく20本/株、1穂粒数90粒でした。㎡当株数を18(坪60株仕様)、登熟歩合を80%、千粒重24gと仮定した収量は約10俵(18x20x90x0.8×24/1000=622kg)と推定されました。

(雑草制御の状況)
 6月の観察では雑草制御は良好で雑草ヒエの残存はほとんど見られませんでしたが、あと発生でイネの上に穂を出したタイヌビエが散見され、また、イネの中で出穂した個体が多数みられ(写真-雑-2)、依然として雑草ヒエを見据えた防除が必要です。オモダカの個体数は「少」ですが、畦沿いのみでなくほ場内にもイボクサが生育し(写真-雑-2)、対応が必要です。開花前なので収穫予定の9/20までには結実しないとみられますが、刈跡での結実防止、次年度の除草剤の選択などに留意してください。

3.C氏圃場

(稲の生育状況)
6月27日の調査では、使用品種「ひとめぼれ」の苗立ちは良好(1株個体数3~5本)であり、全体として株間の生育量の差異が小さく均質な生育でした(写真5)。その後8月1日にNK4kg/10aを施用し、出穂期は8月7日でした。今回の観察でも稲の生育は整然としており、移植と思われるような状況でした(写真6)。生育調査では、稈長80cm、1株穂数は25本/株、1穂粒数やや少なく75粒でした。㎡当株数を18(坪60株仕様)、登熟歩合を85%、千粒重21gと仮定した収量は約10俵(18x25x75x0.85×21/1000=602kg)と推定されました。より増収の可能性はあったが、穂肥の施用時期が出穂期に近かったために1穂粒数増加への効果が小さかったことが残念でした。

(雑草制御の状況)
6月の観察で雑草ヒエが見られず、オモダカが強く抑制され、ごく良好な雑草制御としましたが、その状態が維持されており、一発処理型除草剤の1回処理で済む模範的な例です。オモダカは線形~ヘラ形葉の生育段階に抑制され、クサネム、タケトアゼナがごくわずか生育しています(写真-雑-3)。畦沿いのアシカキの動向に留意してください。(隣接の湛直ほ場では、クサネムがやや多く、アメリカアゼナ、タケトアゼナ、コナギなどが生育しています。)

Ⅱ.室内学習会(JA加美よつば2階会議室)

1. 2022,23年の圃場観察から見た湛水直播水田の雑草の状態(水稲直播研究会森田委員)
(説 明)約8年間、当地の直播水田の雑草制御を観察し、失敗例もありますが全体として翌年増加させない一定の雑草量に抑えていると見ています。初期剤+一発処理型剤、一発処理型剤+中・後期剤および一発処理型剤のみ、の処理でとりくまれており、一発処理型剤の1回処理で済むほ場の多いことが全国の模範です。2022、23年のT氏のほ場でタイヌビエの葉齢を推定すると除草剤使用日には晩限の葉齢に達していないので、雑草ヒエの生育の特徴と剤の適正使用が相まって「1回使用」を可能にしています。22年のイヌホタルイ残存は代かき~播種の日数が長かったためと推定されます。イネ株基部の籾の状態で漏生イネを見分けられるので、雑草イネと併せて動向を警戒してください。2年の観察で「ほ場ごとのターゲット雑草種」を作成・提示しました。雑草の状態は変化するため随時改訂します。個々の除草剤適用条件を確認して安全使用に努めましょう。
(意見など)
Q:(雑草イネ・漏生イネ対象の)石灰窒素はタニシにも効きますか?
A:石灰窒素の使用基準のうち除草作用のみを示しました。成分のカルシウムシアナミドからできる遊離シアナミドに貝防除の効果があります。
A:九州ではスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の防除に使用するのでタニシにも効くと思います。
(タニシについていろいろな意見交換)
Q:除草剤の処理晩限に加えて、イネの生育段階も重要ではありませんか?
A:早限は剤ごとにイネの生育段階で示されますが、当地ではイネの出芽・苗立ちに問題ないので省略しました。イネの生育が遅く、雑草ヒエが早く育つ条件では初期剤で雑草ヒエを抑えることになります。
Q:中・後期剤にも使用開始にイネの葉齢が示される意味は何ですか?
A:「イネ5葉~」は、ホルモン系剤などでイネへの薬害回避のためです。

2. 情報提供:本年の高温が稲に及ぼした一例(水稲直播研究会椛木委員)
(説明)本年の異常高温が農作物に及ぼす影響について懸念されており、稲についてもその内に明らかになると考えられますが、昨日(8月31日)茨城県で知り合いの農家が行った収穫の結果について報告します。「ミルキークイーン」の連年の移植栽培で9~10俵/10aの収量を得ていますが、本年は8俵以下と少ない状況でした。屑米率は例年は5%内外ですが本年は10%程度と高くなりました。乾燥前の籾水分含量は21%(例年は30%前後)と低く、圃場においてすでに乾いた状態にあったと推測されます。その後精米したところ割れ米が多かったという情報も得ています。
(意見など)
Q:今年のような異常高温時に田に水を張るとかえって水温が上がってお湯のようになり、それが白未熟粒を増やす、ということはありませんか?
A:高温下で水分が少ないと登熟に悪影響が出ると考えられますので、田に水を張っておいた方がよいと考えます。水の張り方については飽水状態や浅水だとお湯のようになってしまいますので十分に張り、ある程度深水にしておいた方がよいと思います。

異常な高温の夏で、直播水稲の収量や品質への影響を気にしながらも、JA加美よつば直播栽培研究会の皆さんは、ほ場巡回や夜の反省会で次年度作付けでの改善点などの話で盛り上がっていました。引き続き水稲直播研究会との連携をお願いします。

秋田県鹿角市での現地研修会に行ってきました  令和5年(2023)6月20日

秋田県の北部、青森県や岩手県に接する鹿角市では、低アミロース米品種の「淡雪こまち」が全て湛水直播栽培で生産されています。「JAかづの」の取り組みとして管内の農業者が生産していますが、低アミロース米の特徴を活かし、「玄米を炊飯すると玄米特有の硬さがなく、ふっくらした炊き上がりでプチプチした食感が楽しめます」などのPRで販売を促進されています。今回、6月20日に秋田県鹿角地域振興局の主催で現地研修会が開かれ、当会も出席要請を受け行ってきました。

鹿角市へは、東京から東北新幹線で盛岡下車、大館行きの高速バスで鹿角花輪駅(JR花輪線)など市内各所のバス停まで約4時間で着きます。この日は梅雨の中休みので天候に恵まれて結構な陽射しがありました。

振興局農業振興普及課長の挨拶ののち、ご担当の主査より本年度の播種以降の気象経過、管内直播圃場全般の生育状況と特徴について説明いただきました。研修では2か所の圃場(用野目圃場、八幡平栃木川原圃場)を巡回し、当直播研究会メンバーが圃場に入るなどして出席者に講評やコメントを行うとともに農業者等からの質疑に応答しました。以下はその概要です。圃場の場所は国土地理院地図のハイパーリンクを示しました。開いた画面の十字点がおおよその位置です。

鹿角市八幡平ほ場で説明する当会委員

A:花輪用野目圃場(標高約120m。場所は→地理院地図 / GSI Maps|国土地理院

・分げつ促進のための落水中であり、田面は立ち入っても沈まない程度に乾いていました。県による6月上旬の調査では茎数、草丈、葉齢は平年より少なめでやや生育に遅れがあるとのことでしたが、調査時から10日以上日経たこの日時点では、生育は回復しつつある印象でした。イネの最大葉齢は生育の進んだ個体で7葉がほぼ抽出する段階で、全体では5~6葉期にあるようでした。1号~3号までの下位分げつを確保しつつあるようでした。ただし、全体に生育個体の格差が大きく、これは播種後の低温が影響した可能性があると考えられました。気温以外の気象要因として、苗立ちや初期生育に与える風の影響も大きいので、この点も考慮が必要と伝えました。ご担当の主査から、「そういえば、農業者から“今年は風の強い日が多い”」と聞いたと」との話がありました。次回検討会には直播の苗立ちや初期生育における風の影響について、資料を提示して説明を行うことを伝えました。6月上旬の調査で苗立ちがやや少ない結果が示されましたが、播種量不足など播種作業の問題によるものでは無いことを確認しました。

・タイヌビエの残存が認められ、残存個体は①6~7葉で障害なし、②4~5葉で一部に縮葉症状、③2葉程度、の3種類があることから、播種同時剤の効果が不十分だった、入水後処理剤の効果が不十分であったなどの要因が考えられました。今後、②③を抑えるためノビエ対象の後期除草剤を散布する必要があるが、①の個体には効果を示せる剤はないことを伝えました。

B:八幡平栃木川原圃場(標高約150m。場所は→地理院地図 / GSI Maps|国土地理院

・有機物連用を実施しており、今年は昨年の600㎏/10aからやや減らした500kgを入れたそうです。地力培養取り組みが反映したこともあり、生育は全般に用野目圃場よりもやや優る印象で最大葉齢個体は7葉期に入り始めており、平均的には6葉期程度であった。用野目圃場よりも個体格差が小さく生育が揃っている印象でした。

・外観品質評価の実情について、JA担当者に聞き取りをしたところ、低アミロース品種の特性として白粒率が多いことが基本にあるが、JAとしてはうるち米同様に白粒の少ないものを要望する実需者も多いことから、白粒が少なくなるような生産、乾燥調製を求めているとのことでした。ただし、白粒率が多い生産物を要望する実需者もあるとのことでした。低アミロース品種は低温登熟下で低アミロース性の証である白粒率が減る傾向があります。基本的に低アミロース米の粘りが強い食感はアミロース含有率が低い(白粒が多い)ほど顕著になります。しかし、低アミロース品種の食感は必ずしもアミロース含有率だけで全てが決まるものでは無いとする知見も最近示されつつあり、今後注目する必要があります。

・雑草では、タイヌビエと藻類が見られ、またシズイおよびイヌホタルイが全体に散在し、クログワイ・セリが畦際にチラホラと見られました。残存するタイヌビエで6葉程度の個体はわずかなので、播種同時剤の効果は十分に発揮されたと考えられました。4葉程度で再生育の個体が見られましたが、これは入水後処理剤の効果が変動した可能性が考えられました。クログワイ・セリは畦際に限定されているので大きな問題とならないが、シズイは全体に残り、草丈10cmで増殖用の根茎の伸長が見られるので対応が必要です。藻類は害にはなりません。以上を考えると、今後「ノビエ+広葉雑草対象の後期除草剤」を処理する必要があります。

16時には研修会は終わりましたが、鹿角地域では「あきたこまち」「めんこいな」などの品種も栽培されるほか、花輪盆地や周辺中山間地の標高差、冷涼な気候、夏の昼夜温温度差などの気候資源を利用した、高品質なキュウリ、トマトなど果菜類の栽培、りんごやももなど果樹の栽培も盛んです。中でもももは「かづの北限の桃」として市場に出荷されており、桃の主要産地の山梨県より1ヶ月、福島県より2週間ほど後に収穫、出荷されることを最大限に活かした販売体系を確立されています。

宮城県 JA加美よつば直播栽培研究会の播種後1か月半の湛水直播水稲を観察しました 令和5(2023)年6月27日

宮城県西北部、県の穀倉地帯である大崎平野の西端で4つのJAが「よつばのクローバをめざして」広域合併してできたJA加美よつば農業協同組合(JA加美よつば)では、組合員で構成する直播栽培研究会が水稲直播研究会との連携で湛水直播栽培に取り組んできました(本サイトに既掲載の「加美よつば」関係の記事をご参照ください)。播種後約1か月半を経過した6月27日の午後に、昨年に続いて対面で開催された現地検討会に巡回指導員として農水省農産局穀物課の2名の担当官とともに松村会長以下当会のメンバー4名が参加しました。3筆の直播ほ場において生育状況や雑草等管理状況について調査して助言・指導を行いました。また、今回はほ場巡回後に室内での学習会が持たれました。

ほ場の観察と助言などの詳細、および学習会の内容を以下に紹介します。

写真-1 湛水直播ほ場で解説する本会メンバー

Ⅰ:ほ場巡回

1. A氏ほ場(前年は移植水稲)

1). 苗立ちと生育状況

このほ場(24a)では品種「ハイブリッドとうごう2号」の鉄コーティング鉄コーティング種子を用いた湛水直播栽培(播種量3kg/10a)を実施していました。播種は点播で播種日は5月8日、播種後は5月16~20日に落水管理を行いました。苗立ち状況は全般には疎(1株個体数1~3本)で草丈45cm、葉令7.8、分げつは第1節から2次分げつも含めて大きく太い分げつが確実に発生して1個体当たりの茎数8本と、初期分げつ発生に優れているというハイブリッドライス特有の生育を示していました。苗立ち状況は疎でしたが個体当たりの茎数が多く、着粒能力が高いというハイブリッドライスの特性から見て籾数の確保は容易と考えられましたが、苗立ちの薄いところを考慮してもう少し茎数を確保するために当面は浅水管理とすることを推奨しました。

2). 雑草防除の状況

ジカマック500g粒剤(5/8播種同時:ピラゾレート・ベンゾビシクロン・メタゾスルフロン)+アビログロウMX剤(5/28:ピラゾスルフロンエチル・ピリフタリド・メソトリオン・ブロモブチド)の体系で、雑草ヒエなどの残存なく、雑草制御は良好でした。生産者は「土壌の関係で籾が深く入って出芽が悪い部分があった」とのことでしたが、イネの欠株で空いた部分に本葉2対程度のアゼナ類が散在しました。2回目の剤には「根の露出する条件では・・・注意する。」と表面播種での注意事項があるので、今後留意を要します。

2. B氏ほ場(湛水直播水稲の連作)

1). 苗立ちと生育状況

このほ場(64a)では品種「つきあかり」のカルパーコーティング種子を用いた湛水土中直播(播種量4kg/10a)を実施していました。播種は点播で播種日は5月3日、播種後は5月4~12日に落水管理、5月27~29日に4葉期落水を行いました。苗立ち状況は良好(1株個体数4~6本)で草丈41cm、葉令7.3、分げつは第1,2節の1次分げつ少で1個体当たりの茎数4本と穂重型品種の太くて少ない分げつ特性を示す生育状況でした。本品種は大粒(千粒重24~25g)で昨年の播種量3kg/10aでは苗立ちがやや疎であったので播種量増加の助言が行われた結果、本年は良好な苗立ちになったものと考えられました。圃場状態は軟らかく、根も褐色とやや還元状態であること、また目標茎数(1株25本)を達成しそうな状況であることから中干しを開始することを提案しました。

2). 雑草防除の状況

イッポンフロアブル(5/19:ピラクロニル+ブロモブチド+ベンスルフロンメチル)+ゲパードジャンボ(6/19:メタゾスルフロン+ベンゾビシクロン+ピラクロニル+ダイムロン)の体系で、雑草ヒエの残存はほとんどなく、雑草制御は良好でした。昨年、残存雑草への中・後期剤を見送ったところ、生育・繁茂したことの反省で、中・後期剤を組み合わせたことが効果を発揮しました。草丈10cmを超えるイボクサがほ場内部に侵入しているので対応することが望ましいです。例年同様に条間にイネが多数発生しており、採取した15本のうち9本の籾に種子塗沫剤の痕跡が見られたので、残りの6本、40%は漏生イネと考えられました(ただし、前年も同じ品種なので問題は小さいと思われます)。

3. C氏ほ場(湛水直播の連作で前年はダイズ作)

1). 苗立ちと生育状況

このほ場(82a)では品種「ひとめぼれ」のカルパーコーティング種子を用いた湛水土中直播(播種量2.9kg/10a)を実施していました。播種は点播で播種日は5月3日、播種後は5月3~13日に落水管理、6月5~8日に4葉期落水を行いました。苗立ち状況は良(1株個体数3~5本)で草丈33cm、葉令7.1、草丈はハイブリッドライスや「つきあかり」より低く、分げつは細いが第1節から着実に発生して1個体当たり6本と日本型の穂数型品種の特性を示していました。前日に中干しのための溝切りを行っており、茎数確保もできているので適切な管理と考えられました。C氏の圃場の特徴としては前年と同じく、苗立ちの揃いが非常によく、一見して移植の圃場のように見られることでした。その理由について後程伺ったところ、丹念な代かき作業にあるのではないかと推測されました。

2). 雑草防除の状況

カイリキZジャンボ(5/20:イプフェンカルバゾン+テフリルトリオン+プロピリスルフロン)のみ。雑草ヒエがほとんどなく、(この剤の「直播水稲」での適用雑草の外ですが)多発するオモダカは線形葉の段階に抑制されており、散在するイヌホタルイとともに、除草効果は良好で、一発処理型除草剤の1回処理で済ませる模範的な例です。加重型積算有効気温で「アメダス古川」のデータを用い、5月1日代かきとして予測したタイヌビエ3.0葉の日は5月21日でしたので、「ノビエ3.0葉期」を晩限とするこの剤が使用期限内で処理されたことがうかがえます。畦沿いのセリ・アシカキの内部への侵入に注意しましょう。

Ⅱ. 室内学習会(JA加美よつば営農センター会議室)

1).最近開発された水稲直播作業機械等について(水稲直播研究会富樫中央委員)

(説明)最近開発された播種作業機械について、①自動飛行ドローンに搭載できる水稲の土中打ち込み播種機、②水稲根出し種子による無コーティング直播栽培の適応性、③乾田直播栽培技術マニュアル ―プラウ耕鎮圧体系―、④高速高精度汎用播種機を活用した作物栽培体系標準作業手順書が紹介されました。

(意見等)宮城県東部の石巻等の地域では震災の復興支援の一環としてプラウ耕鎮圧乾田直播が導入されていますが、当地域では一区画面積が小さく、粘土質土壌であり大規模乾田直播には向かないことから湛水直播を基本としています(加美よつば直播栽培研究会)

2). 米の生産コスト低減について(農水省穀物課神田課長補佐)

(説明)コメの生産コストは徐々に低下しているものの、令和3年産時点で、認定農業者のいる15ha以上の個別経営体の全国平均で10,496円/60kgであり、令和5年産までの政府目標である9,600円/60kgは未達の状況であることの説明がありました。農林水産省が米の生産コスト削減に向けて令和4年度から措置している「稲作農業の体質強化総合対策事業(上限1,000万円/コンソーシアム)」が紹介されました。本事業を通じて、直播を始めとした様々な技術を組み合わせるとともに、しっかりとコスト分析をすることで、安定的な水稲経営に結び付けることが期待されます。

(意見等)私どもは20年以上直播栽培に取り組んでおり、技術的には安定しているが今後、若い後継者を如何に確保するかが課題です(加美よつば直播栽培研究会)。

写真-5 JA加美よつば営農センター会議室での室内学習会

8月下旬に予定される次回の現地検討会で、登熟期の直播水稲の観察が楽しみです。

「水稲直播研究会会誌 第46号」を発行・送付しました(付:正誤表)

「水稲直播研究会会誌 第46号」を下記の目次の内容で発行し、会員および関係機関・団体などに発送しました。後日本サイトにPDFを掲載しますが、冊子をご希望の方は事務局までご連絡ください。既刊45号までの会誌は、本ホームページ(http://ine-chokuhan.info/publication/)でご覧いただけます。 なお、記事に誤植がありましたので「正誤表」の通り訂正いたします。

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水稲直播研究会誌46号 目次(令和5年3月発行)

おしらせ 水稲直播研究会の事務所を移転しました・・・・(水稲直播研究会事務局) 1
米の生産コスト低減に向けた現状と課題について・・・・(農林水産省) 3
令和4年度 水稲直播研究会現地研究会―水稲無コーティング種子代かき同時浅層土中直播栽培・・・・水稲直播研究会 11
農事組合法人 有明営農組合(長野県安曇野市)との座談会・・・・(水稲直播研究会) 20
「移植栽培と同等の収量性」を目指す温暖地の水稲乾田直播栽培の技術戦略・・・・農研機構 西日本農業研究センター 中山間営農研究領域 地域営農グループ 藤本 寛 34
秋田県における2022年の水稲直播栽培の作柄解析・・・・秋田県農業試験場 作物部 納谷瑛志 40
いもち病に強く直播栽培に適した多収・良食味の水稲新品種「ゆみあずさ」の育成と特性・・・・農研機構 東北農業研究センター 水田輪作研究領域 水田作物品種グループ 藤村健太郎 46
新たに直播水稲への適用が拡大された除草剤(2022.1.27~2023.1.25)・・・・(公財)日本植物調節剤研究協会 技術部 技術第一課 外崎貴哉 53
東北地方各県における水稲直播栽培等に関する資料 令和4年度・・・・資料 各県における水稲直播栽培・高密度播種苗栽培の取組状況(農林水産省東北農政局) 67
水稲の直播栽培面積について ・・・・(農林水産省穀物課) 75
会員による資材・機器等のプレゼンテーション 協友アグリ シンジェンタジャパン・・・・ 79
研究会委員等による各地研修会・検討会への参加及び現地指導等実績(令和4年度)・・・・85

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正誤表
8ページ上段左列
誤:「みつひかり」  住友化学(株)
正:「みつひかり」  三井化学アグロ(株) お詫びして訂正いたします。
なお、「三井化学アグロ(株)」は令和5年3月31日に「三井化学クロップ&ライフソリューション(株)」に名称変更しました。

令和5年度水稲直播研究会総会・理事会を開催しました(4月21日)
米生産コスト低減に関する講演会を行いました(同日)

当会の活動は、年1回開催する総会において会員の皆様に審議いただき決定・ご承認を受けています。今年度は4月21日に東京千代田区の(公財)日本農業研究所会議室において令和5年度総会・理事会を開催し、令和5年度事業計画及び収支予算の決定、並びに令和4年度事業報告及び収支決算の承認をいただきました。今年度も水稲直播技術の普及推進に努めます。
 総会・理事会終了後、農林水産省穀物課 神田 龍平 課長補佐様から、「米の生産コスト低減に関する現状と課題」のタイトルでご講演をいただきました。講演資料はこちらをご覧ください。
ご講演および質疑の概要は次のとおりです。コスト低減の最新情報や行政の取り組みなどについて貴重なお話をいただくことができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

〇「米の生産コスト低減に関する現状と課題」ご講演要旨(当研究会の取り纏め)
・水稲の直播面積の推移について
水稲の直播栽培は令和3年度全国で約3.5万haであり、全水稲作付面積約2.5%に
該当している。様式別では乾田直播で増加、湛水直播で停滞あるいは減少の傾向にある。地域別の直播栽培面積の動向としては、令和2年は東北(11,800ha)、北陸(9,027ha)、東海(5,141ha),中国四国(2,641ha)、北海道(2,997ha)、関東(1,754ha)、近畿(1,084ha)、九州(926ha)の順であった。令和2年と3年を比較した増減では北海道で大きく増加、東北で微増しているが、その他の地域では減少している。
・令和3年度米の生産コストについて
玄米60kg当の生産コストは15,046円であり、労働費、農機具費がそれぞれ26%、19%と大きなウェイトを占める。政府目標(KPI:日本再興戦略(平成25年閣議決定))によると令和5年までに担い手の米の生産コストを平成23年全国平均(16,001円)から4割削減(9,600円)となっているので、対象となっている経営体をみると認定農業者のいる15ha以上の個別経営は10,496円、稲作主体の組織法人経営は11,294円であった。また、1万円以下の生産コストを実現している先進経営体数はここ10年間で大きく増加している。とくに生産コスト9,600円以下の経営体では労働費、農機具費が低く、単収が高く、労働時間が短い。これに関連して直播栽培取り組み有無別生産コストをみると、各費目の生産コストはあまり変わらないが、直播栽培に取り組んでいる経営体は10a等労働時間が約1.4時間、割合にして10%短いことが特徴的であった。

・その他
米の生産コストを下げるためには、まずはコスト分析をする必要であり、コスト分析を通じて自身の農業経営を見える化することによって経営マインドが育まれる。その中で直播をどのように導入するかを農業者それぞれが考えてほしい。

③ 質疑応答
(質問)コメの生産コストのデータは食用米または飼料米のどちらを対象にしているか。
(回答)食用米を対象にしている。
(質問)条件が悪い水田に対する補助措置のようなものは考えられるか。
(回答)地域の状況に応じた(例えば環境保全、鳥獣害対策、粗放的農業など)補助事業を活用することも考えられる。
(質問)生産コストについて技術内容別(乾直と湛直等)に解析したデータはあるか。
(回答)統計データは限られるので、米の生産コスト低減事業の成果を分析していきたい。
(質問)直播の効果について春作業の省略から園芸作物の取り組みが可能になった例もあるので、コスト面以外の考慮も必要と考える。                                
(回答)直播の効用として取り上げていくべきと考える。
(質問)北海道で直播が伸びている理由は何か。
(回答)岩見沢等で協議会が新たに立ち上げられた効果などによるものと考える

農事組合法人 有明営農組合との座談会を行いました(12月13日)

当会では平成28年度より、「直播栽培でおいしい米」を実現しながら組合員参加で直播栽培面積を拡大してきた長野県安曇野市の(農)有明営農組合とともに、長野県関係機関や地元JAのご協力を頂きながら直播栽培の普及・改善活動を展開してきました。

この間、新型コロナ感染症拡大による困難な状況も続きましたが、感染対策を十分とる中での一定の社会・経済活動が緩和されたことから、組合員各位の直接の声を収録し今後の技術改善や更なる普及拡大に資する知見を得る目的で12月13日に安曇野市内において座談会を開催しました。

座談会では営農組合における水稲直播取組の契機、直播栽培の評価、技術の問題点とその改善方向、後継者育成や面積拡大を含む今後の展望などについて討議を行いました。

“発言される方が少なかったらどうしよう?”との主催者の不安をよそに、ご出席の皆様からは活発かつ熱こもったご発言をたくさんいただきました。

また、ご出席いただいた長野県関係者(長野県農業試験場、松本農業農村支援センター)、地元JAあづみ関係者の皆様からは県での技術開発の状況、県内や地域における普及の状況をご紹介いただくとともに、多くのコメントやご助言も頂戴いたしました。

のぞみ仰ぐ北アルプスなど山々の稜線に雲間から新雪が確認できる寒い一日でしたが、熱気のこもった座談会となりました。座談の内容については、今後取りまとめて令和5年3月発行の水稲直播研究会会誌46号に掲載する予定です。(当ホームページでの公開は令和5年9月ごろの予定)

※有明営農組合様についてはこのホームページトップの「新着技術情報」の下段からリンクのある「マイナビ農業」に「カルパー直播」のお米が品評会で最優秀賞に! ある農業法人の成功への道のり【座談会】」が掲載されています。興味を持たれた方はこちらの方もご覧ください。

2.催し物案内

 

※現在お知らせする催し物はございません。

3.談話室

談話室では水稲直播栽培に関連するトピック等を提供致します。

話題1(2021.10.10)

話題2(2022.6.1)

話題2(2022.6.1)